RX-

 RXー7、この車に僕は特別な思い入れがある。
 僕がテストドライバーの頃、毎日の様にコースを走り回ってたのがFD3S RX7の初期型だった。その頃の記憶では、ブシュウウウウと加速し、バンバンと減速して、クイッとステアリングを切るとドヒャーとテールが流れ出し、そこからアクセルをバカット開けカニ走りでキキッキ、ブシュウウウと走らせていた印象が強い。
後は、キキイッキー、ガガガガー、ドカドカ、ドスンドスンとコース以外の草むらも良く走っていた。つまり、とてもピーキーな特性の車でコントロール性は良く無いがツボにはまると速いというドライビング技術を要する車だった。
 テスト結果は、データ的にはつまり、数値的には高い値を示していた。
 加速性能、ブレーキング、限界コーナリングG、旋回性、得にコーナリングスピードの
限界値は、R32GTRより高かった。但しドライ路面での話しで、雨が降るとGTRの足下にも及ばない。操舵感の無いステアリングにターボが効きだしたとたんクルクル回るシャシーでは、全く気を抜くことできず、ホント雨の日のテストは恐かった。
今考えると当時のRX−7は、メカニカルグリップの弱い、タイヤのドライグリップ頼み車だった!その分、タイヤからの反力がダイレクトにシャシーに伝達されるのでドライでは、凄いコーナリング性能の見せていたのだ!
 そんな僕もここ数年、フェラーリやロータス、BMW、メルセデス、ポルシェ等を
テストしたり、チューニングなんかしていて国産スポーツカーには殆ど乗っていない。
 こんな状態で今回NEWRX−7を試乗することとなった。
 当日は、雨、まあわざと雨の日をねらって試乗してみた。
 1速に入れクラッチを繋いだとたん、重くなった感じがした。あれと思い全開加速
 『こんなんだっけ?』、ホント280馬力?ただ速度は、どんどん上がって行く、
 以前の様なポイールスピンと尻降りはほとんど無い。
 バカ太いSー07と柔らかくなったサスペンションが雨にもまけず、車を加速させる様に進化していた。(メカニカルグリップが良くなった)
 コーナリングもノーズの動きは、少しダルになったがコーナリング時姿勢トラクションの掛かり方も良い、LSDが効き出しアンダーからオーバーステアに変わる点が以前より少し高いスピード領域に以降しており、以前より安定したコーナリングが行え雨でも安心してアクセルが踏める様になった。
 とここまでは良いが、モータボートの様にノーズを上げた加速姿勢はどうも好きに慣れない、加速中のスタビリティもBMWには、一歩もニ歩も及ばない。
 それに相変わらず操舵感が無い、スポーツカーは、ステアリングからの情報は、とても重要なはずなのに、まあ呆れるくらい無い、剛性感は向上したけどどうしてこんな
ステアリングがRXー7に着いているのか理解に苦しむ。
 ステアフィールくらい、タイロットの位置とかパワステの改良とかでなんとかなりそう
なのに、新しいスポイラーよりこんな所を改良して欲しいよ。
 あと、サスペンションであるが、ターンインや旋回加速時のような、過渡特性は、良いが巡行時のフラット感や段差でのダンピング特性は、全然良く無い。また高速レーンチェンジでの治まりも悪い。スポーツカーとは、確かに限界性能も重要であるが普通に走って
いるときの安定感、安心感も重要である。RX−7は、とにかく疲れる乗り心地でヒョコヒョコと治まりの悪いサスは、なんとかして欲しい。
 たぶん開発者は、数値データばかりをおい過ぎ、ドライバーが感じるフィールという物を忘れていたのだろう。(こんな事は昔から言われていたのに?)
  0-400Mが何秒とかサーキットのラップタイムが何秒とかと言う、性能は、公道を走るスポーツカーには、それ程重要で無い。確かに評価基準や商品アピールとしては、必要であるがあくまでも評価の指標であり、それ自体は、実際にこの車を乗るドライバーにとっては意味が無いのである。それより、しっかりした操作性、操縦性、乗り心地のほうがずっと重要だ。RXー7自体、日本が世界に誇る数少ないスポーツカーである。
 パッケージング、デザイン、REエンジンなど素材は良いのだから煮詰めの部分に力をいれもう少し進化させてほしい。